介護食のポイント

5.介護食は栄養デザイン、食事形態デザイン、料理デザインの3つのデザインで構成され食品の3つの機能性を実現した料理であること。

①栄養デザイン

介護食に対応した栄養補給をデザインすること。介護食の食事形態を実現するための調理方法は、栄養損失(特にたんぱく質やビタミンCの損失率50~70%)が大きい。この損失率は、食材や食事形態の展開などで異なるので把握し、不足した栄養素は、栄養補助食品などで補給することで必要になる。また、食品会社が販売している介護食品(とろみ調整食品含む)などは食品ごとの栄養成分を入手して栄養計算に反映することである。

②食事形態デザイン

その人の持っている食べる機能に合わせた食事形態をデザインすること。この6つの力を把握して硬さ、大きさ、まとまり、④すべりの4つの規格で食事形態を決定する。

飲み込みやすい食事形態 5ヶ条

第1条 食材の密度(大きさ・硬さ)が均一であること

食材の大きさや硬さが均一でないと、かみ砕いたり、飲み込みやすい塊(かたまり)にまとめることが難しくなる。調理に用いる食材は、大きさを揃えて、同じやわらかさになるまで炊き込む。また、どの料理も同じ形態にする。十分に炊いても軟らかくなりにくい場合、ミキサーやフードプロセッサーでミキシングしたり、すり鉢ですりつぶしたり、裏ごしを行うことにより、密度を均一にすることができる。

第2条 適度な粘度と凝集性(まとまり)があること

咀嚼したときに口の中でバラバラになったり、喉を通過するときにバラバラになる食品は、上手に飲み込むことが難しくなる。いわゆる単なる「刻み食」は、食塊形成が出来ない人や嚥下障害のある方には危険である。片栗粉のあんや寒天、ゼラチン、粘りやトロミのある食材(山芋、マヨネーズなど)、とろみ調整食品を利用してまとまりのある形態に仕上げることが大切である。

第3条 飲み込む時に変形しやすいこと

喉を通過するときに変形しにくいものは、飲み込みにくい。変形しやすいやわらかさに調理する。末期の人は、ヨーグルト状が良い食事形態である。

第4条 口腔粘膜やのどへのすべり、付着性が低いこと

トマトの皮やわかめ、焼きのり、餅、水飴類やホクホクの焼き芋などのように、口の中やのどにくっつきやすいものは、舌や嚥下機能が低下している場合、飲み込むことが非常に難しくなる。スムーズに喉を通過できるようなすべりのよい形態に仕上げることが必要になるため、適度な水分や脂肪分、とろみを加えてくっ付きにくい形態に仕上げる。それでも飲み込みにくい食材は、使用を控えるようにする。とろみは付けすぎると付着性が増すので注意する。バナナをつぶした形態が適している。

第5条 咀嚼・嚥下は可逆性のもの

食事形態は、その人の食べる口に合わせるだけでなく、食物のパワーと口腔ケアで体力がついてきたら、かむ運動が起きるように、一品はかむ動作が入る形態にする。例えばバナナのスライスが良い。

③料理デザイン

食事は、五感(視覚、聴覚、味覚、臭覚、触覚)を総動員して食べている。高齢者は、長い人生で旬の季節感ある食材や地域の食材を味わう(お袋の味や古里の味)ことや器や盛り付けにまでこだわり、「食を舌だけでなく目で見て味わう」食習慣を形成し百人百様であり個別化が必須である。五感を誘発する食事は、視覚・聴覚・臭覚の情報によって、脳が刺激され賦活し、唾液や胃酸、消化酵素の分泌、腸の蠕動運動などが準備され、いわゆる食事行動のスタートラインにつくことができる。五感を誘発することは、単に食材を味わうということだけでなく、栄養素を吸収するための前段階である消化・吸収・代謝というプロセスにも大きな影響を与えている。特に認知症の人は、食べ慣れた料理、食べなじんだ料理、昔食べた懐かしい味、香り(思い出し法)に配意することが大切になる。

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